PMS(月経前症候群)に苦しむ藤沢美沙(上白石萌音さん)とパニック障害に悩む山添孝俊(松村北斗さん)が主人公です。
生理前にイライラしたり落ち込んだり、頭痛やめまい吐き気を起こしたり不安定な体になることはは知っていたけど、藤沢さんのように重症なケースがあるのだと女の私でも初めて知りました。
夫と一緒に見たのですが、夫はPMS(月経前症候群)というのを初めて知ったそうです。災害などで避難すると生理用品が足りないって毎回ニュースになりますが、男性は女性の体について全く知らないのだと再度認識しました。
私も生理痛には悩まされましたが、PMSや生理痛や更年期障害とか女の身体は本当に大変です。
藤沢さんはそのために勤務先に迷惑をかけてしまい、せっかく入社した大手企業を辞めるはめになってしまいます。
そして、いくつかの仕事を経験し、今は小さな会社で働いています。
山添さんもパニック障害を発症して、かつての会社の上司から紹介された会社で一時的に働いています。
仕事はやる気が感じられず、炭酸ばかり飲んで時々ゲップしています。以前はいい会社の最前線で働いていたのでしょう。現状の不満が伝わってきます。
山添さんの場合、電車に乗れない、床屋に行けない、呼吸困難になるなどの症状があるようです。
私も約15年前にパニック障害を発症しました。私の場合は、朝起きてから夜眠りにつくまで心臓がドキドキして、夜は眠れなくなりました。
不安感からしょっちゅう死にたくなりました。なぜか不思議ですが字が書けなくなりました。(しばらくして書けるようになりましたが、1年位は書き始め手が震えてました)
幸い良いお医者様と巡り会い、今は睡眠薬だけ飲んで飲んでいますが、まだ動悸がすることがあり、その時は頓服薬のように気持ちを落ち着かせる薬を飲んでいます。
なかなか完治しない長い付き合いです。
このような藤沢さんんと山添さんの毎日が映画となっています。
二人は同じ会社で偶然出会います。藤沢さんは具合が悪くなる度に会社を早退したり休んだりしますが、急に休んだお詫びとして翌日必ずお菓子を買って配ります。
そこで空気を読むのが苦手な?(というより空気を気にしない?)山添さんは、お菓子を「いらない」と言って断ります。
大胆な断り方です。普通の人にはなかなか出来ません。
この二人が働いている会社はとてもいい会社です。栗田科学という科学工作玩具の会社で、働いている人達みんながいい人なのです。
ですが、働いてる人達はそのことに気づきません。中学生2人が学校の課題で、この会社のドキュメンタリーを撮っているのですが、インタビューの時「この会社のいいところは?」と聞かれても誰も何も答えられません。
皆さん「・・・えっと・・・」ってかんじです。よその会社にはもっと悪意を持つ人がたくさんいます。しかも無自覚だったりします。パワハラ、セクハラ、時には暴力も。←経験あり。
この会社の人達も藤沢さんと山添さんの症状について、理解を持って気にかけてくれています。
だからかつての上司が山添さんをこの会社につれてきたのでしょう。
最初はギクシャクしていましたが、時が経つにつれて二人はお互いを知り、いい友人になります。
友情から恋愛に発展するのかと思いましたが、そんな気配は全くなく、男女に友情はありえるのかという悩みも発生せず、それぞれが生きづらさをかかえている同志のような友情を育んでいきます。
二人がリーダーシップをとった会社のイベント、移動式プラネタリウムは成功を収めました。
準備をしている時、二人は物置から栗田科学の社長さんの亡くなった弟さんが残した宇宙に関する膨大な資料を発見します。
星座の説明の後、亡き弟さんの残した資料「夜についてのメモ」が朗読されます。
夜明け前がいちばん暗い。
これはイギリスのことわざだが、人間は古来から夜明けに希望を感じる生き物のようだ。
(略)
地球が動きつづける限り、必ず終わる。
そして、新しい夜明けがやってくる。
その場にいる人々、映画の中の人も観客も全員しみじみさせられます。
そして藤沢さんは母親の介護のため新しい会社に転職し、山添さんは今いる会社の社員になることを決意します。
二人別々の道を歩むことになり、再び会うことがあるかどうかは、分かりません。
見終わった後が爽やかで、とてもいい映画でした。
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