日本青年館ホールで草彅剛さん主演の「ヴェニスの商人」を観ました。舞台は何もなく、奥の方に横長のベンチのような腰掛ける場所があります。まず1列に俳優たちが入場し、腰掛けに座ります。そして自分の出番になると照明の当たる前に出てきて演技し、終わると薄暗い奥に引っ込みます。衣装は中世ではなく現代風ですが、どこの国かどの時代が不明確で、着替えも舞台の奥で行います。俳優たちはずっと舞台に出っぱなしです。
セリフは早口で最初聞き取ることが出来ませんでした。私の耳が悪いのかもしれません。すぐに慣れましたが、なんだかゴテゴテと装飾したような言葉で、けっこう長台詞です。ハムレットの有名なセリフ「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ」というのがありますが、パンフレットには訳者の松岡和子さんのコメントがあり、やっぱりシェイクスピア独特の言い回しがあるようです。
イタリアのヴェニス(ヴェネツィア)が舞台で、バサーニオ(野村周平さん)は富豪で美貌のポーシャ(佐久間由衣さん)と結婚するため友人のアントーニオ(忍成修吾さん)から金を借りようとします。アントーニオの財産は航海中の商船にあり金を貸すことができないため、高利貸しのユダヤ人シャイロック(草彅剛さん)にお金を借ります。
野村周平さんが出演されていたのが意外でした。映画の人だとばかり思っていたので。(ちなみに野村さんの出演作で一番好きな映画は「帝一の國」です!私のお気に入りです!)
シャイロックは決められた日付までに返すことが出来なかったら、こう言います。
「貸した金を返せなかったら、あんたの体から、きっかり1ポンド切り取らせてもらおうか」
一人娘のジェシカが父を嫌って恋人と駆け落ちしてしまいます。
さらに商船は難破してしまい、アントーニオは全財産を失ったうえ、シャイロックに自分の肉1ポンドを差し出さなくてはならなくなります。
シャイロックは強欲な悪人ですが、気の毒な面もあります。ユダヤ人差別を感じます。登場人物は名前でお互いを呼び合いますが、シャイロックに対しては「ユダヤ人!」って感じで、名前すら呼ばれません。実際もシェイクスピアの戯曲には名前が無く、ユダヤ人としか書かれていないそうで、シャイロックという名前も後付けだそうです。ユダヤ教よりキリスト教の方が優れているようなセリフもあります。
シャイロックは裁判を起こしますが、小賢しいポーシャが若い法学者に扮装して行った裁判で「血を一滴でも落したら契約違反だ」と言われ、「ならばお金を」と要求すると契約違反だと言われ、結局負けてしまいます。全財産を没収されてしまったシャイロックはさらにキリスト教に改宗を強要されてしまうのです。
この判決は無効ではないのでしょうか!この法学者は偽物です!とゆうか、もっと貸借契約書を詰めておけばよかったのに。私は草彅さんのファンなのでシャイロック贔屓です。
作戦が成功したとわいわい騒ぐバサーニオとアントーニオとポーシャたちが軽薄にみえます。一行の後ろで、がっくりと肩を落し椅子に座っているシャイロック。もちろんそこに照明は当たりませんが、一人絶望している姿にどうしても目がいってしまいます。全員が後ろの席に着くと、シャイロックは立ち上がり正面に歩いてきます。何か言いたげな表情ですが無言のまま、ここで舞台は終わります。何か最後の台詞を期待したのに、私の胸中複雑です。
東アジア人が見分けがつかないように、私から見てヨーロッパの人とユダヤ人は区別がつきません。外見は違わないのになぜユダヤ人はこんなに虐げられるのかと思います。ナチスによるホロコーストという悲劇がありましたが、これも始まりがよく分かりません。
元々はパレスチナの南部にユダヤ人の国があったようですが、他民族に滅ぼされてしまいました。自分達の国が欲しいと1948年に新国家を建国したのですが、新国家は乱暴しすぎではないでしょうか。「うらみはらさでおくべきか!」とばかりに力で国を広げようとしています。各国が非難していますが、長年の恨み辛みで「やられたらやりかえす、倍返しだ!」的なことなのでしょうか。
「ヴェニスの商人」とイスラエルを同時に書くには、私の知識が足らなすぎるので、この辺で止めておきます。
ウィキペディアに載っていたヴェニスの商人の台詞です。
シャイロックはバサーニオから頑として金を受け取らない。どれだけ積まれても受け取らない理由はアントーニオが嫌いだからだという。
「好きになれなきゃ殺す、人間ってそんなものか?」
「憎けりゃ殺したくなる、人間ってそんなもんだろう?」
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