衆議院選挙の中選挙区制が廃止され、小選挙区比例代表並立制が導入されてから30年が経ちました。
導入する時は散々もめたけど、今はまったく違和感なく受け止められてるような気がしていました。この本は、政治家、ジャーナリスト、政治学者16名が、選挙制度改革についてが成功したのか失敗したのか、又は政治家たちはどう動いたのか、当時を振りかえって語った証言集です。
インタビューに答えたほとんどの方は「こんなはずじゃなかった」と言っています。
失敗だったと語っている人もいれば肯定している人もいます。
私は政治についてよく分かりませんが、当時から小選挙区制には反対でした。もしその選挙区に強い人がいれば新しい人が入ってこれなくなり、当選者が固定化されてしまう気がしたのです。(比例代表並立制もありますが)
昭和時代には相次ぎ政治とお金にまつわる大事件が続きました。ロッキード事件、リクルート事件、大物政治家の脱税事件がありました。初めは金権政治を批判し政治改革をしなくてはならないという事からスタートしたようですが、いつの間にか選挙制度改革となってしまいました。
選挙にお金がかかりすぎるから不正する、それを是正するために選挙制度を改革する。元凶はすべて中選挙区制度ということしたらしいです。1989年に自民党は「政治改革大綱」を党議決定し、「政治改革推進本部」を設置します。
小選挙区制を導入すれば金がかからない政治が出来る、二大政党制に向かっていくと言われましたが、現実は令和になっても政治家のお金にまつわるスキャンダルは続きます。
自民党内でもたくさんの意見が出され、大もめになった様子です。それに危機感を抱く人たちも現れ、野党や民間でも様々な案が出されました。当時の政治家の方が熱気があったような気がします。国会での乱闘もテレビで流れ、「政治家でもケンカするんだな」と思った記憶があります。
この本で知ったのですが、小泉純一郎元首相は小選挙区制度に最後まで反対の立場をとっていたそうです。灰皿投げつけて反対したと書かれています。ところが自分が首相になると「郵政民営化」に反対する議員に「刺客」と称する対抗馬を送りこみ、長期政権を担います。「小選挙区制度にしたら党執行部に楯突けない、つまらない議員ばかりになる」と小選挙区制度を批判していた小泉元首相ですが、その通りになったと何人もが語っています。
元自民党総裁の河野洋平さんも「勢いで当選した議員ばかり増え政治のレベルが下がった」と言っています。また、「政権交代が起こる仕組みにした方がいい。長期権力は腐敗する。」とも。
今の石破茂首相は政治改革賛成派として小沢一郎氏たちとともに自民党を離党しました。(のちに石破さんは復党)当時の小沢一郎さんは強面のキレ者というイメージで、私は将来この人が総理大臣になると思っていましたから、自民党を離党したことにとても驚きました。その時自民党は野党に転落し、細川連立政権が誕生しました。だけど3年でダメになり、2009年にも民主党が政権を取りましたが、これも3年でダメになりました。二大政党制は難しいようです。
ここで1つ疑問が。
なぜ小選挙区になると党執行部に楯突けなくなるんだろう。昔の自民党は今より喧々諤々していたようですが、なぜ物が言えない雰囲気になるんだろう。
元自民党副総裁の山崎拓さんも上にもの申す議員がいなくなったと言っています。石破さんも会議での発言者がいなくなったと言っています。
執行部に権力が集中しているようです。選挙の公認や応援、お金に関することを握られていたら逆らえませんよね。だから上から「裏金作れ!」と命令されたら逆らえず作ってしまうのかもしれません。自民党の組織図を見ましたが、正直よく分かりませんでした。ウィキペディアでは「絶大な権力」と書かれていました。なるほど、そうなのか。
選挙・政治アドバイザーの久米晃さんのページがよく理解できました。日本人は明治時代に選挙が始まってから、政党や組織ではなく候補への信頼感に投票してきたそうです。それがいまでも連綿と続いているというのです。政治改革を選挙制度改革にすり替えてマスコミ含め熱狂し、あれは錯誤だったと断言しています。それぞれ異なる地域性で、その地域の代表に投票するのが日本の選挙ということのようです。
だけど最近は人物評価が後退し、党首の「顔」や「風」に左右されるようになってきましたと言っています。党首の人気投票のような感じです。多くの国民は「自民党に入れたいか、入れたくないか」で判断していると言われれば、その通りかもしれません。
当たり前ですが、やっぱり選挙は行かなくてはなりません。初めて投票権がもらえた時私は大人になった気がして嬉しかったのですが、そんなふうに思うのは少数派でしたか。
かつての知り合いで「私は投票に行ったことがない」と自慢げに言う人がいましたが、「なんてもったいないこと!」と思いました。
この本の中で何人かが新しい選挙制度を提案しています。中選挙区連記制や同比例代表制の導入とか。ここは正直よく分かりません。
私も少し政治と選挙について勉強してみました。やっぱりこれからの日本を良くするためにはみなさん選挙にいきましょう。庶民にできる、最低限の政治参加です。
証言者は以下の16名です。
元東京大学学長 佐々木毅
元自民党総裁 河野洋平
元内閣総理大臣 細川護熙
慶応義塾大学名誉教授 曽根泰教
自民党衆議院議員 野田聖子
元自民党副総裁 山崎拓
内閣総理大臣 石破茂氏
選挙・政治アドバイザー 久米晃
自民党衆議院議員 船田元
元新党さきがけ代表代行 田中秀征
立憲民主党幹事長 岡田克也
立憲民主党参議院議員 辻本清美
ジャーナリスト 田原総一郎
政治アナリスト 伊藤惇夫
早稲田大学教授 高安健将
駒沢大学名誉教授 大山礼子
著者:久江雅彦 内田恭司
発行:株式会社岩波書店
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