「シャクラ]ドニー・イェンのアクション                   「ほかげ」趣里 儚く悲しい佇まい

映画

シャクラ」

キアヌ・リーブス主演の映画「ジョン・ウィック」でドニー・イェンの格好良さに惹かれ、この「シャクラ」で再びお目にかかりたいと思い映画を拝見しました。

この香港・中国映画では制作・監督・主演を務めています。
でも、この映画では前回のような魅力はあまり感じなかったのです。お顔が若いので、昔の映画かと思いましたが、そうではないようです。以前より痩せてイケメンになっています。
太め中年なのにアクションが凄いとういうギャップに魅せられていたと思います。
これは全て私のせいです。ドニー・イェンは何も悪くありません。

アクション監督は『るろうに剣心』シリーズの谷垣健治氏です。

シャクラのアクションはもちろん最高です。地面から屋根にジャンプして、屋根から屋根に走り渡り、空中を舞い、幾多の敵を倒します。
ストーリーは少し分かりにくい箇所があります。金庸氏の長編武侠小説「天龍八部」が約2時間の映画になっているので、原作を知らないと少し難しいかもしれません。

とりあえず私と1才しか違わないドニーのアクションを堪能できて良かったです。

「ほかげ」

終戦の直後の闇市、戦争孤児、テキ屋、精神を病んだ復員兵、空襲で家族を失い一人残された者、体を売る女、その他の人々が登場します。
闇市は暗くいかがわしい様子で人々は皆黒ずんだ顔をしています。片隅には幽霊がいるような、そんな雰囲気です。
子どもも皆顔も服も黒く汚れ、臭く、無表情でお腹をすかせています。

監督・脚本・撮影・編集・制作は塚本晋也氏です。音も台詞も控えめで静かです。
朝ドラで活躍中の趣里が主演です。儚げで悲しげで諦めているような女です。
映画の中の登場人物には全員名前がありません。

女は夫と子どもを失い、焼け残った小さな居酒屋で商売しながら時々体も売っています。

拳銃を拾った少年と若い元教員の復員兵とその女が偶然居合わせ、疑似家族のように暮らし始め、3人川の字で寝たりもします。
つかの間安堵する疑似家族ですが、しばらくすると復員兵は女に関係を迫り、拒絶されるとその家を出て行きます。
女と少年に親子の様な情がうまれますが、割のいい仕事をしたい少年は知り合ったテキ屋の男に誘われ女の家を出て行きます。

テキ屋の男役が森山未來さんです。訳ありの怪しさがプンプン匂いますが生きる活力にあふれ、少年の心をグッとつかみます。

ある時、男は少年に持っている拳銃を自分に貸すよう命令し、あるお屋敷に忍びこみます。
お屋敷にいた主は元上官で、自分に戦場で人殺しをさせたと言って拳銃を撃ち込みます。復讐の旅だったのです。
男は少年に報酬を渡し帰れと言いますが、少年はお金はいらないと答え帰りの汽車賃だけ貰います。

家に着くと女はやさしい声で迎えてくれます。
でも、うつる病気だからと言って奥の部屋から出てきません。女は襖越しに拳銃など使わず真面目に働くよう諭します。

少年はその言葉を胸に闇市で一生懸命に働きます。そこで一発の拳銃の音が響きますが、また通常の闇市の喧噪に戻ります。
ここで映画は終わります。

誰もまともな人間は登場せず、皆精神を病んで夜にうなされたり恨み辛みを抱えていたり、闇市は誰もが意地悪で少しでも多くようけようとします。

見たことは無いけど戦争直後は本当にあんな感じだったんだろうな。

テキ屋の男は自分達に人殺しを命じた元上官が、お屋敷で平和にのうのうと生きていることが許せなかったんだろうな。

私の祖父も夜うなされていたし、戦争の事は聞いても何も教えてくれなかったし。

ニュースだけでも見てて辛いのに、実際に経験した人はどんな辛い思いをしたのかと想像します。

心にしみる反戦映画でした。

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