本 未来屋書店 第1回生きる本大賞 ノミネート作品『慣れろ、おちょくれ、踏み外せ』『布団の中から蜂起せよ』

慣れろ、おちょくれ、踏み外せ

本屋が好きで、なんとなくふらふら見て回ることがあります。
最近もそんなふらふらしていたら、「生き方大賞」と宣伝のある本が2冊並んで飾ってありました。
気になって2冊購入し、1冊読み終え2冊目を読んでいます。

ネットで確認すると、『未来屋書店 第1回生きる本大賞』とあり、2022年9月から2023年8月の選考期間を経て、2023年末からフェアをやっていたんですね。
たまたま未来屋書店さんを覗いて良かったです。
大賞受賞は「死ぬまで生きる日記」ですが、気づかなかったのか売り切れだったのか、大賞ではない方を購入いたしました。
大賞の方はいつかまた出会ったらにしたいと思います。

「慣れろ、おちょくれ、踏み外せ」は、社会学・クィアスタディーズ専門家の森山至貴教授と文筆家の能町みね子さんとの対談をもとに構成された本です。
ほとんどの人はLGBTという言葉は知っていると思いますが、今はその後にQがついています。最近ではそれに+が足され、LGBTQ+ になりました。

LGBTは、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーですが、Q+ はご存じでしょうか。

「Q」は、クィアとクエスチョニング両方の意味を持つそうで、「その他」だそうです。
「+」については、文字や言葉ではまだ完全に説明できないすべて、既存のカテゴリに自分自身を識別したくない人も含めることもできるそうです。

自分が男か女かの性自認が無い人・Xジェンダーや、複数を同時に同等に愛する人もいるので、そういう人達が「その他」に入るのでしょうか。
映画「性欲」は噴水の水に性的興奮を感じる人々が登場していたし、何かの本でカーテンやピアノカバーに使われるビロードの生地に興奮する人もいるって読んだことがあります。

その「クィア」について、森山先生と能町さんが対談しながら、答えづらい難しい質問を私たちに問いかけてきます
そして新しい気づきを教えてくれます。

クィアスタディーズとは、90年代に生まれた学問で、LGBTのどれにも含まれない、「その他」を構築する学問のようです。
この本を読んで初めてクィアスタディーズという存在を知りました。

この「その他」というのは、かなり壮大なようです。
しかも流動的とも述べられています。

人生の途中で、性のあり方も含めて変わることもあるそうです。
四十代、五十代で気づいて行動に移す人がいるそうです。30才くらいまでは、自分の性自認が安定しないというのは何かの記事で読んだことがあります。
幼い時から身体と心が一致しなくて、親の理解もあり早急に性転換手術をしたら、後から自分は異性愛者であることに気づき後悔するというケースもあるようです。
ただし、私はゲイですっていう人に「治るんじゃないの」っていうのは間違っています。
自分の性自認は自分で決めなくてはいけないし、それは尊重するべきです。

現在は分類すると、LGBTQQIAAPPO2Sと続き、まだまだ無限小数のように続くらしいです。
分類して整理して終わりではないと森山先生が言っています。なんだかマイノリティのはずなのに壮大な宇宙にきらめく星々のような気がします。
無限少数という言葉に、無限の宇宙を想像してしまいました。

本のタイトルにある『慣れろ』というのは、別にあなたたち(マジョリティー側)には合わせませんからっていうメッセージが含まれているそうです。
多様性を「受け入れる」とか「わかる」っていうのは多数派の意見で、「かわいそうな人」枠で「かわいそう要素」を排除した、単に権利を獲得するだけでは無く、もっとはっきりと喧嘩を売るようなスピリットがあるそうです。
好戦的にも聞こえる「慣れろや!」それがクィアスタディーズのようです。

『おちょくれ』とは、結婚制度について疑問を呈しています。結婚をおちょくれです。
現時点では同性婚は認められていません。

この本の著者である能町さんはご自身がTであり、ゲイ男性と性愛関係を持たないまま結婚生活をおくっているそうです。詳しくは「結婚の奴」(平凡社、2019年)を読んでみてください。
シビアな事もあったと思いますが、「奇妙な形での結婚を世間は認めてくれます?世間よ!さぁ!」という感じです。
「そもそもそんなに結婚が偉いのか」というクィアスタディーズ研究者の考え方も感覚としてはあるそうです。
でも、何かあった時、事故にあった時や病気になった時、身内しかダメっていう時のために、パートナーシップ宣誓制度を早めに全国に普及してほしいです。

私自身は結婚制度について、よく思っていません。権力に縛られているような気がして、事実婚でいんじゃないのって思います。
結婚して35年経ちますが、家父長制度のような言葉を見聞きするとげんなりします。

そして、『踏み外せ』ですが、踏み外しが世界を広げると書いてあります。
これはとても正しいと思います。私はそう願っています。みんなが踏み外せばどんどん広がっていくと思います。

この本は「基準を疑え、規範を疑え」と言います。
人を男と女の2種類になんとしてでも分けるという社会規範は批判されてきて、最近の書類は性別欄に「その他」または「答えたくない」とあるのも多くなってきました。
恋愛対象と性的指向が一致しない人も存在するそうです。ある男性の話ですが、恋愛対象は女性だけど、男性も性的欲求の対象になるとか。
森山先生は学校で教えているので、いろんな学生から多様性を実例で教えてもらえるそうです。

恋愛感情が無いという人も最近では話題になっていますが、それを想像するのはなかなか難しいです。
でも、よく分からないけど、たくさんの「その他」がフローラのようにいると考えると面白いと感じてしまいます。
本当の当事者は世間から理解されず、避難されたり阻害されたりしていると想像できますが、辛抱我慢してください。まだ追いついていないのです。

私は産まれてずっと「その他」の気分で生きていたので、もしも私に打ち明けてくれても、全く不都合はありません。解決も出来ませんが。

少子化の問題にも触れられています。
森山先生は、個人の選択に「こうするべき」という枷をはめようとする方向に行きがちと述べられています。
この問題は難しくてうかつに書けないので、いつかまた。

今回の問題はここです。⇒「こういう問題に便乗してLGBTを攻撃しておこうという人達がいます。」

「彼ら彼女らは子どもを作らない。つまり生産性がない。」と書いて有名になった政治家がいます。少子化になったのは別のところに原因があり、この人は単に差別主義者ですけどね。
ただ、「子どもがー」と言われちゃうと、私も子無しなので、大名行列が通る時の平民みたいに「はっ、はぁー」と土下座状態になってしまいます。

最後の方で「小児性愛」についても書かれています。
「小児性愛はLGBT等の性と違って論理的に認められない」という人もいます。
でも、クィアスタディーズ研究者は「小児性愛の欲望は他と欲望と比較してて劣っているとは考えない」としているそうです。
むしろ「その欲望は行動には移してはいけない」と考えます。これは当然です。

「子どもに対してしか性愛を抱けない」「リスキーなSM」「人を殺して性的興奮をおぼえる」とかなんだかディープになってしまいましたが、彼らに救いの手はあるのかっていう問題です。
声高に権利を主張するわけにはいかないので、常識的にカウンセリングを受けてください。っていうことでした。
犯罪予備軍と一方的に追い詰めないで、こういう性的指向があることを一旦心に落ち着かせて、カウンセリングなりなんなりで妥協点を探っていくしか方法はないようです。

文章が散漫になってしまい、恥ずかしいです。
本著ではいろいろなこと、性や恋愛はもちろん、結婚、家族、幸福、身体、未来について等、多岐に渡り書かれています。
マジョリティとマイノリティの境目について語られている箇所は興味深いです。

『慣れろ、おちょくれ、踏み外せ』森山至貴×能町みね子著 朝日出版社 おすすめです。

上の3点の画像は2023年職業訓練校Webクリエーター科の授業で作ったものです。仕事は見つかりませんでしたが、世間に出せて良かったです。

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