映画『碁盤斬り』夜が美しい映画です。

映画

最近番宣に忙しい草彅剛さん、テレビや雑誌によく出ています。

昔からファンだったので(気が多くてごめんなさい)チェックに余念がありません。

ミッドナイトスワンの時はこんなにテレビに出てしなかったと思いますが、旧ジャニーズの力が衰えたせいでしょうか。やたらハイテンションで時々変な人になっています。、そんなに一生懸命しゃべらなくていいよ、と声をかけたくなります。

監督は白石和彌さんです。この方の映画は「彼女がその名を知らない鳥たち」「ひとよ」を観たことがあります。それぞれ辛い人生を歩む、田中裕子さんと蒼井優さんが印象に残っています。

草彅剛さんが演じる柳田格之進は、融通の利かない極めつけの武士、頑固で真面目一筋の男です。冤罪で藩を追われ妻も失い、ひとり娘のお絹と長屋で貧乏な生活を送っています。

偶然知り合った萬屋の亭主、萬屋源兵衛は格之進の嘘偽りの無い囲碁に惹かれ交流を深めていきます。

お絹役清原果耶さんと萬屋の手代弥吉役の中川大志さんが、おじさんばかりの映画の中で瑞々しさが際立ってみえます。

吉原の楼閣「半蔵松葉」の大女将 お庚を演じる小泉今日子さんもあごの丸みから、ベテランの風格を感じます。9才で吉原に売られ地獄を見てきた女が、ヤヌスの鏡のように、優しい母親のような顔と、足抜けした遊女に対する容赦ない顔の両方を見せます。

萬屋源兵衛役の國村隼さんが渋くて素敵です。2016年の韓国映画「哭声/コクソン」では、ひっくり返りそうな衝撃を受けました。人間なのかそうではないのか分からない、謎の山の中の男を演じました。この役で韓国の映画賞で助演男優賞と人気スター賞を受賞しています。その姿が忘れられず、ドラマ等で穏やかな役を演じていても、「なめんなよ、本当の國村さんはこんなんじゃないぞ」とつい、余計な事を考えてしまいます。

もちろん私の好きな俳優さんのひとりです。

最初、萬屋の亭主、源兵衛は陰でケチベエと噂されていたのに、格之進に感化されていい人になっていき、仏の源兵衛と呼ばれる頃には商売も繁盛するようになっていきます。源兵衛の変化も見所の1つです

しかし、静かな暮らしから一転、後半は仇討ちとなり、格之進は黒く汚れ凄みを増していきます。白格之進から黒格之進に変わります。

江戸時代なので、夜は真っ暗、昼間でも部屋の中は薄暗くなります。ロウソク1本の小さくぼんやりした灯り、お祭りの夜の赤々した灯、萬屋の四隅に置いた行灯。夜の灯りが美しいです。

仇討ちに出発するシーンの早朝のまだ太陽が昇らない薄暗い中、橋を駆け抜ける姿。途中編笠の縁を手にし、振り帰ると吉原の灯が遠くから美しく並んでいます。

紺から青になる空を背景に朝焼けのオレンジ色の光りをあびた、決意を秘めた格之進の顔が凜々しいです。

仇を探す賭囲碁の場所も障子を閉めているため、昼間から薄暗く、隅は暗くて見えません。何か良からぬ風情が漂い、これから何かが起こりそうな期待を高めてくれます。

格之進と敵役の柴田兵庫斎藤工さん)が対決する部屋の、障子を開けた外に池と白い砂利、その向こうの夕焼けに染まる富士山

殺陣のシーンも良かったです。囲碁好きの真面目さだけが取り柄の普通の人だと思っていたら、意外と動けて、いつ武術の稽古してたの?って感じです。

最後の方、格之進が盗んだと思われていた50両が萬屋で見つかって、お詫びに弥吉と源兵衛ふたりが首を差し出すシーン、本当に斬るのかと焦りました。刀のカチンという音がした後、真っ二つに斬られた碁盤を見て、「ああ、この映画は碁盤斬りだった」と思い出しました。そういう意味だったのかと。

帰り際、ふたりのご婦人が「吉原があんなに優しいはずがない」と言っていました。都合のいい話しと思われる人もいると思いますが、元は落語の人情話ですからいいじゃないですか。

季節の移り変わりが綺麗で、始まりは桜の木、蝉の鳴き声と風鈴の音色、落ち葉と風、大晦日には雪がちらちら舞います。そして梅の赤い花白い花で終わります。

源兵衛が変わったように格之進自身も変わり、忠義や清廉潔白が良いことだけではないと気付きます。黒格之進はグレー格之進へ進化します。意外な結末でした。

#映画 #時代劇 #碁盤切り #草彅剛 #國村隼 #白石和彌 #柳田格之進 #小泉今日子 #夜の灯りが美しい #落語の人情話し