日本ロボット工学の石黒浩博士の自分の顔そっくりに作成した、アンドロイドをテレビで拝見したことがあります。その時感じた奇妙な感覚。この映画のチラシを初めて見たとき、みんな自分の顔と同じ顔をお面の様につけていて、石黒博士のアンドロイドの違和感を思い出しました。お面でバナーを作ろうとおもっていたら、かわいい狐のお面を発見。よし、これがいいと決めて作りましたが、ついふざけてしまい、自分だけで楽しんでしまったようなバナーになってしまいました。反省しています。
この日を待っていました。
ヨルゴス・ランティモス監督の新作映画です。「女王陛下のお気に入り」「哀れなるものたち」どちらも面白かったから期待が膨らみます。
映画が始まったら聴いたことのあるリズミカルな曲、ユーリズミックスの「Sweet Dreams」でした。1983年の曲です。
男が大きな屋敷を訪ね、美しい女性がスマホを片手に相手を確認します。「…しわの無いシャツにR.M.F.の刺繍。」と電話の相手に伝えます。男は一言も発しません。分厚い封筒を受け取ります。多分中身は何かの報酬でしょう。
その後別々の3つのストーリーが描かれます。あれ、この続きはどうなるの?と思いましたが、どんどん物語は進行していきます。
最初の軽快感は消え去り、ピアノの「ピーン⤴ ドーン⤵」という不穏な音と、字幕が出ないので意味の分からない合唱が繰り返し流れます。
CHAPTER 1
最初の話しは、権力者の言いなりになり、逆らったら逆らったで不安になり、元の鞘に収まって安心する男の話しです。
私生活の全てを上司に管理され、無茶な命令に背くことが出来ない男が、とうとう反旗を翻し、会社を辞めます。途端に妻は家からいなくなり、上司からのプレゼント「1984年にジョン・マッケンローが壊したテニスラケット」(透明ケース入りで妻がいままでで一番と喜んでいた)も消えてしまいます。
男はストーカーのように元上司に戻りたいとすがりつきますが、全く相手にされません。
その命令は男が偶然知り合った女性がほほぼ実行しており、男はさらに重ねて上司の命令を実行し、再び上司に迎え入れられます。
これはいったい何なんだろう。権力に支配されて服従して、意志を持たないほうが生きやすいという提示?
CHAPTER 2
その次は行方不明になった妻が戻ってきたが、一人違和感をいだく警察官の男の話しです。
災難を乗り越えて戻ってきた妻は大勢から祝福されますが、夫だけが「姿は同じだけど別人」と言い張ります。以前の妻と趣味嗜好が変わっていたのです。
次第に常軌を逸した行動を取り始める男に、同僚は精神的ダメージのせいだと想像し仕事を休むよう勧めます。
男は妻のやることなすこと全て拒絶しますが、それでも妻は献身的に尽くします。尽くしずぎて自分の体を犠牲にし、死んでしまいます。すると玄関のドアが開き本当の妻(?)が現れ、2人はひしと抱き合います。
妄想と現実が混ぜこぜになっていて、真実は分かりません。玄関に現れた妻も妄想かも知れないし、自分で腹を切り裂いた妻も妄想かもしれないし。
CHAPTER 3
3番目の話しは、カルト教団のリーダーの男女(夫婦?)が教祖にふさわしい徒特殊能力を持つ人間を探して、ある信者が苦労のすえ見つけ出すが、うっかり死なせてしまう話しです。
教祖の資格とは、双子の女性で片方がすでに死んでいるという人。信者の男女がペアを組み、各地で教祖のイメージに合う人物を探しています。女の運転はかなり荒っぽく、モーテルの駐車場では毎回ドラフトして止まります。
幾度の災難を乗り越え、そのイメージ通りの獣医師の女を見つけ出します。信者の女は歓喜のダンスをします。でもその獣医師を眠らせて車で運んでいる途中で交通事故を起こしてしまい、彼女はフロントガラスを突き破って飛び出し血まみれのまま動かなくなってしまいます。安全運転してほしかったです。
この理不尽さが苦くて面白いです。信者の女は教団の常識外の決まり事を信じ、それに縛られて生きています。
ラストに再び最初の男が登場します。屋台のホットドッグを食べています。ケチャップを垂らしてしまい、シャツを拭うとR.M.F.のアップが。
3章とも主な登場人物を同じ俳優が演じています。俳優たちの演技がすごいです。
脚本もヨルゴス監督が書いていますが、どうやったらこんな話しを書けてしまうのか、天才だと思います。
不条理でシュールでブラックで、どんなに悲惨な場面でも、なぜか可笑しみがあります。
夫は2章に登場する妻が自分の指を包丁出切り落すシーンで退席してしまいました。好みは分かれるかもしれませんが、私はこの手の映画、大好きです。
CAST
第1章の部下と第2章の警察官と第3章の信者の男・・・・・・・・ジェシー・プレモンス
第1章の偶然知り合った女と第2章の妻と第3章の信者の女・・・・エマ・ストーン
第1章の上司と第2章の妻の父親と第3章のカルト教団のリーダー・・ウィレム・デフォー
最後まで読んでくださりありがとうございます。
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