映画「52ヘルツのクジラたち」児童虐待 ヤングケアラー トランスジェンダー アウティング 孤独

映画

52ヘルツのクジラをウィキペディアで調べました。
通常の鯨は10ヘルツから39ヘルツで鳴くそうですが、たったひとりだけ52ヘルツで鳴く正体不明の鯨の声が検出されたそうです。
1980年代からさまざまな場所で観測されており、仲間を探しつづけているのかもしれません。

杉咲花さんが「市子」に続き、今回も大変な役を演じています。

田舎の海辺の一軒家に東京から来た女性が一人で生活を始めます。名前は三島貴湖(きこ)といいます。
近所の人達は好奇な目でよそ者の彼女を見ます。

ある雨の日、貴湖は母親から虐待を受けている少年と出会います。
貴湖は少年にやさしく声をかけ、イヤホンを差し出し録音されたクジラの声を聞かせます。
52ヘルツの声で鳴く一人ぼっちのクジラの声。「あんたの声、わたしには聞こえたよ。」
少年に昔の自分を重ねた貴湖は彼を守ろうと決意します。

過去と現在を行ったり来たりしながら、貴湖たちの物語が進みます。

貴湖も母親から虐待されて育ち、高校を卒業してからはずっと義父の介護をしていました。
疲れ切った貴湖はふらふらと街を歩き、トラックにひかれそうになりますが、たまたま居合わせた岡田安吾(志尊淳さん)に助けられます。
安吾と一緒にいた貴湖の高校時代の同級生美晴(小野花梨さん)も心から貴湖を心配し、3人で友情を深めていきます。

貴湖は二人の力を借りて家を出て自立していきます。
安吾は貴湖に52ヘルツのクジラの鳴き声をプレゼントし、自分達を「アンコとキナコ」と名付け、友達として信頼関係を深めていきます。
貴湖は安吾に恋心を抱きますが、安吾に「一生の友達」と言われてしまいます。

やがて貴湖は初めての恋愛をします。
相手は会社の御曹司新名主税(宮沢氷魚さん)、二人は贅沢なひとときを過ごしますが、ひどい結末を迎えてしまいます。
主税は親の勧める相手と結婚することになり、貴湖は愛人の立場になります。
安吾は婚約者の家に貴湖の存在を知らせ、主税の結婚は破談になります。
激怒した主税は貴湖に暴力を振るい、その腹いせに安吾の母親に安吾の本当のセクシャリティを教えてしまいます。

ここでトランスジェンダーやアウティングの無理解が問題提起されます。
安吾の本当の名前は杏、女性の名前です。自死してしまうのです。

死なないでほしかった

最初、安吾さんを見たとき、妙なあごひげをはやしているとひっかかりを感じました。
後からトランスジェンダーと分かり納得しました。
でも、死なないでほしかった。今まで男の身体になるため、ホルモン注射したりひげをはやしたり努力してきたのに。
理解されなくても、それでも頑張って生きてほしかった。

現代のシーンに戻ります。

貴湖と美晴は少年のために奔走し、愛(いとし)という本当の名前と声を取り戻します。
そして育児放棄で切ってもらえなかった長い髪を切り、ヘアドネーションをします。
短髪になった顔のなんて可愛らしいこと!

それから、
映画では友人役でしたが、貴湖が心配なあまり東京での仕事を捨ててかけつけてしまう美晴も心配です。
いくら親友でも会社を辞めて地方の町まで駆けつけるってないでしょう。
原作は読んでいないので分かりませんが、いつも明るい美晴も安吾や貴湖とはまた違う悩みを抱えているのでしょうか。

最初は距離のあった近所の人達とも次第に打ち解けていきます。
貴湖にはすぐ駆けつけてくれる友人もいるし、まだ若いのでじゅうぶん人生やり直しが出来ます。

#映画 #52ヘルツのクジラたち #杉咲花 #志尊淳 #トランスジェンダー #アウティング