「哀れなるものたち」 POOR THINGS

映画

数年前に見た、ヨルゴス・ランティモス監督と俳優エマ・ストーンの「女王陛下のお気に入り」はなんともおぞましい衝撃の映画でした。
題名はかわいいのですが、中身は女同士のどろどろの権力争い。陰鬱でありながらも爽快さもある、ひとことでは言い表せない映画でありました。

そして、幾多の映画賞を席巻した監督は再び同じ俳優と新たな映画を作りました。
ヨーロッパの旅をしながら波瀾万丈に生き返った女の物語です。
美術も音楽もファッションも美しいです。私の好きな世界です。

【ロンドン】
モノクロで奇妙な世界です。
19世紀末のロンドンで臨月の女性ベラ(エマ・ストーン)が橋の上から身投げします。
天才的外科医のゴッドウィンは、腹を裂き新生児を取り出すと、ベラの頭に新生児の脳みそを入れ変えます。
やがてベラは目を覚まし、精神のみ赤ちゃんから人生再スタートします。
ゴッドウィンは弟子マックスと共にベラを大切に育てていき、それに答えるように精神は成長していきます。
やがて世界に興味を持ったベラは女好きの弁護士ダンカンの誘いに乗り、ヨーロッパ横断旅行に出かけます。

【リスボン】
ロンドンではモノクロの世界でしたが、リスボンからカラーになります。
空中にはロープウェイが走り、まるで未来都市のようで、光や色が溢れ作り物の箱庭にいるような不思議な世界です
二人は快楽に耽り何度もセックスします。ベラはお酒を飲んだり甘いお菓子を食べたり、楽しい音楽やダンスに夢中になります。
自由奔放なベラにダンカンは焦り出し、無理矢理船に乗せるのでした。

【豪華客船の中】
船の中で不機嫌なベラですが、老婦人のマーサと美しい黒人青年のハリーと出会います。
二人は知的で身なりも綺麗です。関係は謎です。
ベラはマーサに本を勧められ読み出します。みるみる間に知識を増やしていくベラに対して、ダンカンは不機嫌になります。
雲は重く海は黒くあまり爽快さはありません。二人の間に少しづつ亀裂が入りかけています。

【アレクサンドリア】
アレクサンドリアに停泊したベラはハリーに誘われて、船上から地上を見下ろします。
そこには死にそうな赤ちゃんと死んだ赤ちゃんの山、貧困にあえぐ人々、病気で死にそうな人々。
船と地上の間に石の階段がありますが、途中で階段が崩れていてベラは地上に降りる事が出来ません。
まるで絵画のように船とアレクサンドリアの地が遮断しているのです。
大きなショックを受けるベラはダンカンがカジノで手に入れた大金を全て「あの人たちにあげて」と下船する船員に手渡してしまいます。
お金を失ったダンカンはカンカンに怒ります。

【パリ】
お金が無くなった二人はパリで客船を下ろされます。
ベラはお金を稼ぐため娼館で身体を売ります。ダンカンは激怒しますが、ベラは生きるためにしたことで何も恥じていません。
そこで様々な人に出会い、社会主義の思想を深めていきます。また大学で医学の勉強を始めます。
ベラに未練たらたらのダンカンは精神に異常をきたし、精神病院に入院することになりました。
ベラはゴッドウィン危篤の知らせを受けて急きょロンドンへ戻ります。

【ロンドン】
余命わずかのゴッドウィンから本当の自分の出自を知ります。
様々な経験を得て成長したベラはマックスと結婚することになりますが、式の当日ベラの元夫ブレシントンが現れ、連れ帰ってしまいます。
ブレシントンは自分を束縛する残酷で最低な男と知り、だから自分は身投げしたのだと理解します。
屋敷に閉じ止めようとするブレシントンに、とっさに運動神経の良さを発揮し見事にやっつけます。
ベラはゴッドウィンの元に戻り、つかの間の親子の情愛を感じます。
そして、ベラはマックスは友人達に囲まれ幸せな日々を過ごしたのでした。

~終わり~

最初は奇妙な世界ですが、ベラが成長し知識を身につけるにつれて、だんだんと背景やセットが現実っぽくなっていきます。
ファッションも19世紀末の設定ですが、ベラは大きな提灯袖の上着にミニのキュロットスカートを着ています。
19世紀末と現代が混ざっているようで、なぜかベラだけファッショナブルで異質です。
パリの娼館で働いている時もキュートです。だけど段々と服装も現実と違和感がなくなります。

タイトルもよく意味がわかりません。『哀れなるものたち』とは一体何を指すのでしょうか?
男でしょうか?
医師のゴッドウィンはフランケンシュタインのような顔をしており、子どもの時から父親の実験台になっていて体に後遺症を残していますが、父親を恨む言葉は一切発していません。
弁護士のダンカンは最初は遊び程度だったのに本気になって最後はベラに捨てられます。
元夫のブレシントンは残酷な男でしたが、最後は頭にヤギの脳みそを入れられてしまいます。
女でしょうか?
ベラは自分の思いだけで行動していて、他人がどう思うかは気にしていません。旅をしながら知識を深め、真の自由を考え始めます。

関係ありませんが、ベッドシーンも多く男性器もチラ見えしています。
ベラがおちんちんを指でピン!とはじくシーンも、そりゃ興味持つよね~とほのぼの見てました。
昔はモザイクがかけられていましたが、あれは見づらいものでした。
昔見た洋画で古典をテーマにした物語で、次から次からモザイクで興ざめしたことがあります。

『哀れなるものたち』とは・・・一生懸命考えました。

自信ありませんが、男の古い価値観のような気がします。

#映画 #哀れなるものたち #エマ・ストーン