「Q」 呉 勝浩  弟を守る危険な姉 

新聞の書評コーナーで「Q」を知りました。
書店でこの本を見た時、辞書のような分厚さにひるみ、何日か迷いましたが思い切って購入しました。

読み始めるとハードボイルドな面白さと息をのむようなスピード感で、寝る時間を削って読んでしまいました。   

この物語の主たる人物です。お互いに愛称で呼び合います。

「ハチ」こと町谷亜矢                                                    24才 暴力の中で生きてきたためか命知らずの女 傷害事件を起こし執行猶予の身


「ロク」こと町谷睦美                                     24才(姉)頭の切れるキャリアウーマン 策略家


「キュウ」こと町谷侑九                                    19才 超イケメンでダンスの才能がハンパない 無邪気な笑顔で人を引きつける

この3人は姉弟だけど血のつながりは無く、それぞれの母親が一時的に町谷と婚姻関係にあったため、名字は町谷と名乗っています。

他にも個性ある人物達が次々と登場します。

有吉  昔、翼達と亜八を苛めていたが、今は改心し何かと亜八を助ける次元大介のような男
百瀬  すごい金持ちで侑九を自分のものにしたく狙っている
本庄健幹 睦美の恋人でのち結婚し、睦美の仕事を手伝う
町谷重和 3人の義父 株屋の世界じゃ知る人ぞ知る傑物
椎名大地 7年前、弟・翼の失踪でハチを疑い狙っている

他にもハチを狙う男、キューを狙う男、キューの母親の秘密を探る芸能記者やらが入り乱れてストーリーは展開します。

登場人物の紹介だけでもこの本の面白さが伝わるような気がします。

千葉県の小さな清掃会社で働くハチは先輩社員の苛めに耐えながらも真面目に生活しています。
そこに同い年の姉ロクからスマホにメッセージが「会いたい」と届きます。
2人は訳あって久しく会っていない様子です。

大手プロダクションに所属しているキュウは「ソレイユ」というダンスグループに所属していますが、他メンバーのレベルに満足していません。
練習も不真面目なため干されているような状態です。

ロクは自分の手でキュウを売り出す計画を立てます。
そのためには多額のお金と人脈が必要であり、キュウの過去もハチとロクの過去も誰にも知られてはなりません。

その知られたくない過去とは…。

その過去とは、7年前の夏、ロクがキュウを救うため計画し、ロクとハチが実行した殺人事件でした。
キュウの母親はキュウのレイプ映像を売ってお金を稼いでいる、とんでもない女でした。
母親と相手の若い恋人「翼」を殺して失踪事件のように見せかけて始末します。

それは予想を超えて上手くいってしまい、事件化されませんでした。何事も無かったように、ハチとロクは別々の道に進みます。

でも、本当は別の真実があったのです。そのことをハチは知りません。

ロクはなんとかお金と人脈を見つけ、プロダクションを設立します。
そして、キュウを「Q」として動画コンテンツに放ち、圧倒的な輝きに魅了された人らが次々と信者となっていきます。
次にロクはゲリラライブの配信<暗夜行路>を発表しますが、キュウに対する殺人予告が届きます。
しかし細心の注意を払いながらライブは実行されようとします。

そして、ゲリラライブの進行とともに本当の真実があかされていきます。

殺人予告者は誰か。
百瀬の本当の狙いはなにか。
ハチをつけ回す翼の兄「ダイチ」について。
3人の義父重和について。
7年前の殺人事件の本当の狙いは何か。

キュウの命が狙われていることを知ったハチは捨て身の覚悟で救おうとします。

最後までハラハラさせます。本当の真実については背筋が凍ります。

ラストは一瞬風がやんだ気がしましたが、登場人物達にはまだ困難が待ち構えているような気がします。
誰も幸せになっていないような。

どうなんでしょうか。

著者は呉 勝浩(ご かつひろ)さんです。

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