「愛にイナズマ」
”早くしろよ、腹減った” 初老の男
”ありえないことって、起こりますよね” 折村花子
若い女性が映画監督を目指し奮闘する映画かと思っていたら、崩壊した家族を再生させる映画で、なおかつ人を勇気づける映画でもありました。
主演は松岡茉優さんです。若手のなかでは最も演技の上手い俳優さんのひとりだと思います。ドラマや映画で何度か拝見しましたが、一番記憶に残っているのが「万引き家族」です。
その映画で風俗で働く女性を演じていましたが、お客の男がやさしくされて泣いてしまうというシーンで、私も胸が熱くなり一緒に泣いてしまいました。まるで聖母マリア様のような抱擁を感じたからです。
ダブル主演のもう一人、恋人役が窪田正孝さんです。「青が散る」という映画でライバルのボクサー役で出演されていましたが、キリキリするような冷たい迫力で「こんなに上手い俳優さんだったんだ！」と知りました。
主人公の新人映画監督折村花子は、やっと手にしたチャンスをベテラン助監督に奪われてしまいます。おまけに脚本も会社から返してもらえません。
そのベテラン助監督役が三浦貴大で、憎たらしい演技がとてもグッドです。
ある夜バーで、アベノマスクをつけた風変わりな男「正夫」と出会い、二人は「ありえないことは起こる！」と意気投合します。そして瞬間的に恋に落ちます。
仕事を失った花子は恋人の正夫を連れて実家に帰り、そこでカメラを回し映画を撮り始めます。実家には父親の治（佐藤浩市さん）が一人で住んでおり、しかも不治の病に冒されています。母親は花子がまだ小さい頃に外国に行ったという事になっていて、ずっと不在のままです。治は花子の兄二人を呼び寄せ、10年ぶりに家族全員が揃いました。さらに花子のカメラは止まらず家族喧嘩もありのまま写していきます。
実家での花子は、兄二人いる妹ってあんな感じなのかなっていう感じで横暴振りを発揮します。実家だから本性丸出しなのか、父も恋人の正夫も兄二人も妹には逆らえず竜巻に巻き込まれていくようです。
花子のパワーの源は怒りだから、怒りが収まらないうちは竜巻は終わらないのです。その渦の中で母の秘密、父の秘密を知ることになり、家族は再び愛を取り戻します。
ダブル主演のお二人が本当に素晴らしいです。松岡茉優さんは前半(映画会社）後半（実家）で性格がガラッと変わりますが、嘘がありません。
窪田正孝さんの風変わりなキャラクターに、わざとらしさを全く感じません。
最後に花子が言い放ちます。「意地でも諦めませんよ、私は」
すぐ不安になってなんでも諦めがちな私のこころに響く言葉でした。
「ゴジラ-1.0」
前回の「シン・ゴジラ」はシミュレーション映画のようだったのに対して、今回の「ゴジラ-1.0」は「ALWAYS三丁目の夕日」風という感想です。
何度も映画化されて、そのつど自国が破壊されるのに、日本人はゴジラが好きなんだなっていう思いを再確認しました。
なぜ日本人はこんなにもゴジラが好きなんでしょうか。
ゴジラは海の奥深く静かに暮らしていたのに、アメリカの核実験により被爆してしまい、細胞が変化してあのような姿になってしまったんですよね。
自分の体が変化してしまった怒りと戸惑いと悲しみを、たまたまビキニ環礁から日本にきて大暴れさせてしまったのでしょうか。
監督の山崎貴さんは今回のゴジラの存在を「神様と生物の両方を備えた存在」「荒神」とおっしゃっています。
もし祟りとしたら納得がいきます。静かに祭っていればいればいいのに怒らせてしまったのですから。
毎度ゴジラは死んでしまうのですが、たった一人で海の底に沈むのは可哀想だなと言った私に対して、ゴジラは家庭があるから大丈夫だよと夫が慰めてくれました。
ミニラという子どもがいるそうです。ということはパートナーもいるって事ですよね。海の世界は未知数なので、またゴジラは復活するでしょう。
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